学歴社会のカタチ

今回、再びアメリカに来て気付いたのだが、アメリカって思ったよりも学歴社会だと感じる。高校までは皆、同じかもしれないが、大学からはやっぱり厳しい競争があるみたい。Ivy Leagueと呼ばれる名門校はやはり入るのは大変みたいだし、US Newsなどでも定期的に大学ランキング（ただし、これは偏差値とは違った尺度で調べているみたい）みたいなのが発表されている。東海岸はやはりIvy Leagueが上位を占め、西海岸だとStanfordとかUniversity of California、シカゴのあるMidwestであれば、やはりUniversity of ChicagoやNorthwestern University（ケロッグのある大学）と言った大学はランキングが高い様だ。

 

有名大学に入ればコンサルや、投資銀行など、こちらの人が考える有名企業への就職も楽になるようだ。GSBにいるアメリカ人学生のレジュメとかを見ると、Yaleを出てWall Streetの投資銀行とか、UoCを出て戦略コンサルなんかだと、皆、おおぅ、という感じになる。また、ビジネススクールを出ていないと入るのが難しいという業界もやはり多い。コンサル、投資銀行はその傾向がもちろん強いが、VCやバイアウトなどのファンドだと更に顕著だ。

 

一方で、ビジネスマンの勉強意欲も総じて高い。僕がこの夏、インターンをした3人のパートナーも全てMBAを持っていた。特に有名大学という訳ではないが（但し一人はハーバード）、恐らく社会人になってからパートタイムで通ったものだと思う。以前書いた、GSBにもパートタイムのMBAがあるが、多くの社会人が週に2回、6～9時の授業を取っている。仕事と合わせてやっている事を考えると凄いパワーだ。向上心が高い。

 

逆に、まあ、これが原因でもあるのかもしれないが、企業側は採用する人材がどの様な学位を持っているのかを結構、気にする。（学校は問わず）MBAを持っていれば一般的に民間企業は評価はプラスであろうし、また、IT企業であればComputer Scienceの学位などが重要になってくる。面白かったのは、日米でインタビューをしていると、会社の国籍を問わず、欧米のインタビュアーからは1年目にどの様な授業を取ったか、と言うのは良く聞かれた。要は自分が不得意なスキルは授業を取る事でカバーしているという事実をある程度、信用してくれるのに比べ、日本人のインタビュアーに関しては、その様な質問は決して聞かれず、ビジネススクールに来るまでの経験・実績のみで判断されている様な気がした。要は学校で学んだ事に関しては、余り興味がないか、信用していないのだ。

 

これは日本の大学の仕組み（入学は大変だが、卒業は楽、一方でアメリカは一般的に入学は楽だが、卒業は大変と言われる）に起因しているのかもしれない。日本は学歴社会と言っても、どの大学にいたか、がそこで何を勉強したかよりも重要であって、逆にアメリカでは、どの大学で、何を勉強したのか、という両方が重要な気がした。“学歴社会”と言っても中身が微妙に違うのだ。

 

ここまで書いていて気付いたのが、これは大学に起因すると言うよりも多分に国の労働市場に拠るものなんだろう。労働市場の流動性が高く、常に即戦力を求めるアメリカでは、企業は関連した分野での経験及び学位を求めるし、一方で個人は常に勉強して学位を得ながら自分の競争力を高めていく必要がある。その結果、上記の様な現象が出てくるのだろう。翻って、企業が内部で人材育成を重視する日本では、ある程度のレベルの大学を出ていれば地頭の良さは証明されているから、学校で何を学んだかは余り重要ではないのであろう。

 

怖いのはいつの間にか上記の様な日本的な考え方が自分の中に凝り固まり、違う国の違う国籍の人材をきちんと評価できなくなる事だと感じた。

 

さて、最後にヨーロッパであるが、オランダにいた時に、大学進学率が余りに低いので驚いた。確か2割程度と言っていたと思う。ここに面白い調査がある。主要先進国の大学進学率を比較したものだ。日本やアメリカ、同じヨーロッパでもイギリスは50％を越えていて高いものの、ドイツやフランスはそこまで高くない。国として大学進学率が低いと言うのはどういう事なんだろう。そもそも敢えて行っていないのか、それとも（学費などの費用が高くて）行きたくても行けないのか。何が理由なんだかは調べてみないと分からないが、僕が直感的に感じたのはヨーロッパの人たちは余り大学に行く価値を感じていないというもの。言い換えれば、大学教育は国民全員に対して与えられた機会という風に感じてない様な気がした。その根源にはもっと面白いものがあると僕は感じたのだが、それに関してはまた今度。